こんにちは、湯浅です。
私はこれまで、イラク戦争をはじめとした多くの戦争地域に関心を持ち、戦後の復興やその過程で起こる社会構造の変化を追ってきました。
そんな中、最近話題に上がっている「イラク・デジタル・ディナール(IQDT)」というデジタル通貨に注目せざるを得ませんでした。
一見、夢のようなこの通貨。
しかし、その裏にある構造を覗いてみると、どうにも信用できない“影”が見えてきます。
「イラクデジタルディナール」の名前に潜む、知られざる落とし穴とは
イラクディナールの将来に希望を抱いている方は、世界中に数多くいます。
石油大国イラクの経済が回復し、通貨価値がかつての水準へ戻るのでは。
そんな“再評価の可能性に期待して、ディナール紙幣を購入する人も後を絶ちません。
ですが、ディナール投資には現実的な壁があるのも事実です。
偽物の紙幣が出回っている
イラクの銀行口座を開設できない
換金が難しい
こうした課題を乗り越える手段として登場したのが、「IQDT(イラクデジタルディナール)」という存在です。
しかし、この“新しい選択肢”には、見逃してはならない大きな違和感が潜んでいます。
IQDT(イラクデジタルディナール)とは?
IQDTとは、「イラクディナールに連動した仮想通貨(ステーブルコイン)」と紹介されることが多いです。
紙幣を買うリスクもなく、銀行口座も不要。
スマホ1つで投資ができる。
たしかに夢のような仕組みに聞こえるかもしれません。
ですが、冷静に見てみましょう。
✅ 銀行名は?
✅ 運営元は?
✅ どこにディナールが預けられているのか?
✅ そもそもイラク政府は関わっているのか?
このようなことが、曖昧なのです。
「預け先がない」=信頼できない通貨
通貨とは、本来「価値を保証する裏付け」と「それを管理する機関」があって初めて成立するものです。
しかし、現在出回っている「イラクデジタルディナール(IQDT)」には、それを預かる金融機関の存在が見えません。
銀行の名前も出てこなければ、運営会社の所在も不明。
監査報告もなく、誰が換金保証をするのかも書かれていません。
このような状況では、「通貨」というよりも、単なるデジタル上の“名ばかり資産”に過ぎない可能性があります。
IQDTには“本物”と“偽物”があることを知ろう
ここで勘違いしてはいけないのは、IQDTという名前すべてを否定しているわけではないということです。
もし将来、イラク中央銀行や政府が正式に「IQDT(CBDC)」を発行することがあれば、それは信頼性の高い本物のデジタル通貨となる可能性があります。
しかし、現在広まっているIQDTは、あくまでも「偽物のIQDT(=イラクデジタルディナール)」です。
発行体の信頼性、銀行との関係、換金性など、それらすべてが不透明なまま流通している時点で、「本物」ではないと判断すべきです。
名前に安心しない。
「イラクディナールに連動している」「将来価値が上がる」といった言葉は魅力的ですが、大切なのは“中身”です。
誰が管理しているのか
どこで保管されているのか
換金はどの金融機関でできるのか
これらの情報がひとつでも欠けているなら、それは通貨ではなく、単なる幻想のデジタルアイテムに過ぎません。
銀行の影が見えない通貨には要注意
イラクディナールの価値復活に夢を見ることは、悪いことではありません。
ですが、その夢に便乗する“偽物のIQDT(イラクデジタルディナール)”が存在しているのも、これまた事実です。
通貨の本質は、「信頼」です。
その信頼は、発行体・管理体制・預け先が揃って初めて成り立つものです。
銀行の影が見えない通貨には、くれぐれもご注意ください。
そしてどうか、
「IQDT=危険」ではなく、
「偽物のIQDT=危険」であることを、正しく認識していただければと思います。